森木ペーパー

用途:予約制展示室
敷地:東京都墨田区
竣工:2021.12
施主:株式会社森木ペーパー
ディレクション: ハタノワタル
施工:THモリオカ
和紙施工:ハタノワタル/名塩和紙:高島弥
アートワーク:ハタノワタル
照明計画:ModuleX
置き家具:アルクファニチャー
草花:楓景
協働:アトリエソルト(藤原洋司)+田井昭裕
コーディネート:中村菜穂子
写真:臼井淳一

東京墨田区にある1925年(大正14年)から続く手漉き和紙専門の卸売を手がける
森木ペーパーの新業態となるビューイングルーム(予約制展示室)のプロジェクトである。
我々設計は黒谷和紙の紙漉き職人、アーティストでもあるハタノワタルさんからお声をかけていただき、オーナーである森木ご夫妻とお会いした。ちょうどコロナ渦になる直前だった。

原料農家さんの高齢化により国産原料の生産量がここ数年激減、危機的な状況となっている和紙業界のために、多くの人に手漉き和紙の魅力を広めること、
その為に国産楮100%で漉かれた和紙だけを内装に使用した空間。
天井、壁、床、家具、棚、建具… 様々な表情をもつ和紙に包まれた空間を体全体で感じながら、1枚1枚の和紙を手に取って購入できる場所の実現に向けてプロジェクトは走り始めた。

空間に使用された国産楮の和紙は黒谷和紙、土佐和紙、
小川和紙、小国和紙、美濃和紙、石州和紙の6種類。

和紙そのものを主役とした空間にする為、
余計なものを排除、直線的で奥に誘う(いざなう)ミニマルな構成としている。
各設備機器は存在自体を極力感じさせない、溶け込むように隠蔽・仕上げている。
重要となるライティング計画は
レイアウトにあるテーブルや什器で商品を確認するだけでなく、
今後ワークショップにも使用する為、適切な照度を確保し、和紙越しの穏やかな自然光と調和するような柔らかなグラデーションで計画、
日中は和紙越しの柔らかな光が空間を包み、日暮れ以降も日中の落ち着いた印象とつながる空間とする為に
光環境をロジカルにコントロールし調和することを実現している。

このテキストを書いている2023年、コロナ渦が終わりを告げ、制限が解かれ今後多くの分野で価値観やスタイルの変化が起こることが予想される今、現代の生活空間に寄り添う内装材・インテリアとしての和紙の可能性、魅力を感じていただけるのではないだろうか。

和紙
黒谷和紙:ハタノワタル 林伸次  
土佐和紙:田村寛  
小川和紙:久保孝正
小国和紙:今井宏明  
美濃和紙:加納武  
石州和紙:久保田総 西田勝