実と美

用途:モナカ & 茶
敷地:大阪府大阪市天王寺区
竣工:2019.09
グラフィック:中崎航
左官:奥野左官
家具:秋友家具製作室
金工:須賀広大
照明計画:ModuleX
生け込み:京庭なる井
暖簾:fabricscape
恊働:アトリエソルト(藤原洋司)
写真:臼井淳一

“日本の良きもの”をコンセプトに、日本文化に根付く
お茶と最中(和菓子)を現代の生活に合わせた楽しみ方で提案する

季節ごとに拘りの素材を詰め込み、
見ても食べても美しい一口サイズの“実”をイメージした最中と、
ペアリングできる茶葉を厳選し毎回丁寧に急須で注いだものをコーヒーのように
持ち歩けるスタイルで提供するテイクアウト専門店。

3階建の1階部分に売り場、その奥に厨房を設計。

売り場部分は1日5種類前後の小さな最中、
一粒一粒の美しさに視線が真っ先に向くよう最中を魅せる箱をイメージ。

床、壁、天井は墨モルタルで統一し、奥の厨房へと続く建具とレジカウンターは
銅板貼りにすることでポイント付けしている。銅は茶道具にも使用される
素材であること、そして経年変化で益々味わい深さが増し、
お店と共にこの場所に馴染んでいくよう願いも込められている。

レジ台横の大きなカウンター、壁付けの小引き出しがたくさんついた棚は
この店用にイメージした物をアンティークで選定、それにただ素材感を
合わせるのではなく絶妙に外した栃の木を使った家具を新規で合わせた。

それぞれが小さな空間で主張をぶつけるのではなく、あくまでも商品を
主役とした周囲の道具でありつつ、脇役にも目をやると一つ一つが拘りをもって
この場を作る為に選ばれているところも茶道具と共通させている。

また、天井を敢えて低くすることで茶室のようなコンパクトなイメージを与え、
テイクアウト商品を選んだり受け取り待ちの短い滞在時間(数分)の間に外とは
空気感の違う、何かを感じてもらえるのではと狙った。

ファサード、開口には暖簾のみで建具はない。
これは拘りの空間、商品でありながらも誰しもに開かれた場所である
という意味を持たせている。

実際に開店後には近所の小さな子どもが小銭を握りしめて最中を買いに来る姿も。
拘りの空間で厳選した美味しいモノを老若男女問わずたくさんの人々に
楽しんでもらいたい。そんなオーナーの願いが込められている。