上京区の家

用途:専用住居
敷地:京都府京都市上京区駒之町
竣工:2026.03
施工:丸忠アーキビルド
照明計画:ModuleX
家具1:秋友家具製作室
家具2:アルクファニチャーポイント
写真:臼井淳一

京都市上京区、京都御所と鴨川の間に建つ、村野藤吾設計によるSRC造のヴィンテージマンション。その一室を、若いご夫婦のための住まいとして改修した計画である。
周辺には京都らしい穏やかな時間が流れる一方、住まいには「住」と「働く」が重なり合う現代的な機能が求められていた。本計画では、単に意匠や機能を整えるのではなく、異なる用途や時間の流れを、ひとつの空間の中でどのように成立させるかを主題として設計を進めている。

生活の中心となるLDKには、キッチン、ダイニング、リビング、ワークスペース、寝室といった複数の用途を内包している。それぞれを明確に分けるのではなく、生活の流れに沿って緩やかに重ね合わせることで、ご夫婦それぞれが自然に居場所を持ちながらも、互いの気配を感じられる距離感をつくり出した。

仕事をする場所が読書の場にもなり、リビングが思考の場にもなるように、用途を単一の機能へ固定し過ぎない構成としている。日々の過ごし方や時間帯によって、空間の使われ方が静かに変化していく住まいを目指した。

既存建物は天井高が低く、空間には物理的な制約があった。そのため、単純に広さを求めるのではなく、視線の抜けやディテールの連続性、設備の隠蔽、家具や造作の高さ・仕上げの調整によって、空間に奥行きと広がりを与えている。各所の家具や造作は共通したルールのもとで構成し、全体を淡いトーンで統一することで、静かで柔らかな空気感をつくり出した。

また、外部と内部を隔てる開口は、室内に対してできる限り大きく確保している。東側には京都東山の山並みが広がり、大文字を望む景色と朝の光が室内へ入り込む。隣地が低層であることに加え、住戸が6階に位置していることで、都市の中にありながらも高い開放性とプライバシーを確保している。その抜け感を積極的に室内へ取り込み、時間の流れを穏やかに感じられる住まいを目指した。

既存建築の持つ空気感やスケールを活かしながら、現代の生活に合わせて空間を再構成すること。用途を細かく整理し切るのではなく、仕事や読書、食事など、それぞれの行為が自然に重なり合う状態を受け止めること。この住まいでは、その曖昧さや余白を大切にしている。

読書をしたり、仕事に向かったり、夫婦がそれぞれ異なる時間を過ごしながら、同じ空気を共有できる住まいを目指した。